新書:AT&TとIBM

whzat2007-11-19

新書:AT&TとIBM
UNIXについて調べていて見つけた古いが興味深い本だ。
初版1989年版でこれからISDNが普及しようとする時代の本だが、AT&TとIBMの対決からUNIXがどういう時代背景を持ったOSかがわかる貴重な本だ。(Linux出現前の時代背景を考慮して読まれたい。)

AT&TとIBM 那野比講談社現代新書952
http://community.books.livedoor.com/item/5200/i278867/

AT&Tアメリカ国内の電話と通信の90%を占める最大の企業で、IBMはコンピューターの巨人と言われている。1956年の司法省の同意裁定により、両大企業は自分の分野からお互いの分野に進出しない「棲み分け」が行われてきた。ようするに独占禁止法にかかわる縄張りが設定されてきたわけだ。しかし、1984年の規制緩和により、両者は相手の分野に進出を開始した。

同意裁定時代にAT&Tはコンピューター業に進出しなかったが、研究開発を続けてUNIXを完成し、ゆるいライセンスで大学や主要な研究機関に安く配布した。その結果、国内にたくさんのローカルな改良版UNIXが生まれた。ライバルのIBM(AIX)をはじめ、多くのコンピューター企業が自社製品用の改良版UNIXを開発・販売した。
中でもカリフォルニア大学ではUNIXのネットワーク機能を改良した4.2BSDをリリースし、大学構内だけでなく国防省(DARPA)のARPANET(当時は最先端軍用通信:インターネット開発研究プロジェクト)に採用され、ネットワークOSとしても一目おかれる存在になった。(このBSDは現在のFreeBSDSun Solarisの先祖だ。)

規制緩和後、IBMは通信事業に進出する。一方のUNIXの生みの親でありOSライセンスを持つAT&Tは、新興のワークステーション会社SUNと組み、UIIという勢力を作りコンピューター業に進出する。UNIXをライセンス利用するコンピューター企業たち(DEC、HP)は、その強力なコンビに危機感を持ち、OSFという勢力を対抗して作り盟主にIBMを担ぎ出した。OSFはIBMのAIXを基盤とするUNIXの標準化を提唱する。規制緩和後の2大企業がUNIXをめぐり正面対決する状況が出来上がった・・・。


IBM産業スパイ事件は知っていたが、業界のトレンドを変えるほどの大事件だったことは知らなかった。

・・・UNIXってAT&Tのコンピューター業界進出の伏線だったんですね、だからタダ同然で配布してたんだ。

・・・この本の続編があったらぜひ読みたい。