単行本:ブルーマジック

whzat2007-10-27

単行本:ブルーマジック
古本屋で見つけて読んだがおもしろい。

「ブルーマジック」
ジェイムズ・クポスキー/テッド・レオンシス 著 近藤純夫 訳 経済界 平成元年5月発行
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AF%E2%80%95IBM-%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%B3%E9%96%8B%E7%99%BA%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%81%AE%E5%A5%87%E8%B7%A1-%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%8

1981年に発売されたIBMのパソコンIBM/PCの開発をめぐるノンフィクション本だ。1978年スティーブ・ジョブスたちのベンチャー企業アップル社は AppleII を発売して成功をおさめた。パーソナルコンピューターという言葉が生まれて個人でもコンピューターが使える時代が始まった。

当時大型コンピュータのビジネス界ではIBMが圧倒的なシェエアを占めていたが、アップルの成功に刺激されパソコン参入の遅れを挽回すべく急いで開発・販売されたのがIBM/PCだった。IBMは官僚的な機構なのだが、異例のフランク・ケアリー会長直属のプロジェクトであり、開発期間も1年というおどろくほど短いプロジェクトだった。

プロジェクト・リーダーにビル・ロウが選ばれ、13人の技術者とマイアミ州ボカラトンのIBM工場で開発が開始される。3ヵ月後にプロジェクトリーダーはドン・エストリッジに引き継がれ苦闘の末にIBMPCが誕生して成功をおさめる。このIBMPCが、その後パソコンの世界標準になったわけだ。IBM/PCはそれまでのように自社製造の部品など一切使わずに、すでに市販されている社外製品(CPUはインテル・・・)を採用し、OSもマイクロソフト社に外注するなどIBM始まって以来の異例の製品でもあった。これによりのにちに、低価格・高性能なIBM互換機が生まれて世界標準になっていく。

本書が「ビッグブルース」と違う点は、ビッグブルースがIBMという会社と経営という視点からIBM/PCの生まれた背景を描いている一方、「ブルーマジック」はIBM/PC開発チームのメンバー(技術者)たちの視点を通してのIBM/PC誕生を描いている点の違いだ。
IBM/PC互換機がその後IBM/PCを追い詰めてしまうのが何とも皮肉だ。

原書からの翻訳はいいとは言えないが、アップル、インテルマイクロソフトなどとの関係や交渉についてもくわしい取材があるので、各社の考え方や企業戦略もわかるいい本だ。