小説「生麦事件」読んだ

小説「生麦事件」読んだ
この1年で司馬遼太郎歴史小説を続けて読んでいるが、しだいに未読本が少なくなってきた。なるべくたのしみを取っておくために、別の小説家の書いた幕末物などを読むことにした。知り合いの司馬遼太郎ファンから教えてもらって読んだがおもしろい。

生麦事件〈上〉 (新潮文庫)

生麦事件〈上〉 (新潮文庫)

この小説では生麦事件を切り口にして幕末から明治の開化までの情勢を描いている。著者の吉村昭は歴史的な資料になるべく忠実に書く主義のようだ。司馬遼太郎のような味とはちがって、淡々と史実を語るドキュメンタリー風だ。

生麦事件を発端に薩英戦争があり後に和睦する。攘夷派の島津久光は、戦争でイギリスの軍事力の大きな格差を知り、方針転換して開国派となり和睦する。この小説では薩摩藩での和睦交渉までの過程が一番興味深かった。「きのうの敵はきょうの友」ということわざどうりのありさまだ。

和睦後はイギリスとは逆に親密になる。その後の薩摩藩の軍艦や最新兵器調達なども、イギリスの親密な協力によるものだ。最終的に薩長が幕府を倒す。

歴史的な薩英の和睦交渉をした薩摩藩士重野厚之丞と高崎猪太郎の手腕もさすがだ。

不幸な事件だったが、薩摩藩を開国に目覚めさせた生麦事件をくわしく知るにはいい本だ。