新書:「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」

新書:「2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?」
年末に読んだがおもしろかった。2ちゃんねるのオーナーであり、管理人であるひろゆき氏のインターネット論の本だ。

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?
 ー巨大掲示板管理人のインターネット裏入門ー 扶桑社新書014

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書)

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? (扶桑社新書)

最初に本題の結論が書いてあるというのもユニークだ。
2ちゃんねるの管理者ひろゆき氏(西村博之)から見たインターネットの現状と見識はさすがだ。また佐々木俊尚氏、小飼弾氏との対談は興味深くておもしろい。ひろゆき氏のプロフィールがわかる。


2ちゃんねるは現代版落書き場所
去年は司馬遼太郎の小説を何冊か読んだ。本文中でひろゆき氏が「インターネットにはこういう思いを書ける場所が必要なんだ・・・」という意見を読んで思いついた。これは戊辰戦争戦没者を祭る国家的な鎮魂施設(現在の靖国神社の原型)を創設した大村益次郎のことを思い出した。外国とはちがい日本では宗教が国民の生活を支配していないためかなのか、弱音や絶望などの受け皿としての宗教が健全に機能していないのが原因に1つかもしれない。

インターネットを使う時はパソコンで1人黙々とデスクトップ操作する作業だ。その個人の思いや願いをインターネットの掲示板に書けば、日本中で読んだ共感者や反共感者と対話ができるのがウリだ。
ただし今までインターネットには掲示板がたくさんあったのだが、2ちゃんねるだけが人気を呼んで巨大化した原因は、はひろゆき氏の掲示板管理・運用(術?)にある。匿名の書き込みでも拒否しない方向で掲載し続けることができたのは、ひろゆき氏個人所有の掲示板であったからできたことだろう。インターネット上の日本人用の新アンダーグランドでもあるが、オピニオンリーダーや宗教者でなくひろゆき氏個人の掲示板というのがおもしろい。

2ちゃんねるを潰すほうがたいへんだ
ひろゆき氏も言っているが、これほどまでに巨大化した2ちゃんねるをつぶす方がたいへんだ。書き込みも子供のたわごとと言ってしまえばそれもしかりだ。たしかにマユツバな書き込みも多いが、でも数%は役立つ意見もあるのもたしかだ。


■法整備のおくれた日本を逆手に取る
2ちゃんねる掲示板の書き込みをめぐっては、管理者としてひろゆき氏は何度も裁判所に訴訟されて(法廷欠席のため)そのたび負けてきた。提訴理由というのも子供じみたけなし書き込みに、大人気なく怒って提訴するケースもあるのも事実だ、こういった無責任と言っていいような匿名書き込みをも、守るように無抵抗に近い対処する方針に、「ここはおれたちの居場所だ・・・」という多くの共感を呼ぶのだろう。巨大化の原因はこのへんにある。ただし、反政府ではなく犯罪防止自殺防止については警察にはちゃんと協力しているそうだ。

慰謝料や損害賠償は民事なので、敗訴したとしても刑事罰のようには執行されないという盲点がある。現在の賠償金額の累積は相当な額なそうな?
この点はアメリカのグーグルが一流の弁護士団を用意して訴訟対応しているのとは対照的だ。

梅田望夫氏とひろゆき氏のあいだにある世界
ウェブ進化論梅田望夫氏はベンチャーコンサルタントで、ウェブの未来に大きな期待と希望を抱いている。楽観的すぎると言われているが玉石混交する現状のインターネット世界の状況をわかりやすく説明し、これからの明るいインターネット社会の向かうべき方向性を示した功績は大きいと思う。彼は西海岸在住のIT系投資コンサルタントなんだから、後ろはあまり見ずに未来に希望を持たずにお仕事できないだろう。
一方のひろゆき氏はプログラマー系出身で今はプロデューサーらしい。本文を読むと未来にはほとんど期待していないことがわかる。「たかがタダがウリのインターネットだよ儲かるわけないよ・・・って感じだ。また、会社経営やしがらみもないので物事の見切りも早い。
この対照的な両者に共通点があるとすれば、物事を断定的に判別して捨てた物には見向きもしない。既存の価値観にとらわれず、ダイナミックな状況に自分を置いて、時代のとトレンドを本能的に嗅ぎ分けていることだろう。わたし的に見れば出発点はちがうが同じことをやってるんだなと感じる点がある。どちらも当たっていると思う。
それにしても、年配者の梅田氏がインターネットの中に明るい希望を信じているのに、若者のひろゆき氏が超?現実的なのはなんともゆかいだ。こういう異才のある人がいることが日本にとっては救いだ。小飼弾ブログを読んでいたら一刀両断で

ディスカヴァー社長室blog: 世代間の最大のギャップとは?
それは、基本的に、「明日は今日よりよくなる」と信じている世代と、「明日は今日より悪くなる」と不安に思っている世代の違い。

という意見がある。世代間断絶と割り切ってそれ以降を考えた方がいいようだ。

2ちゃんねるはどこへゆく?
正月に、2チャンネルがシンガポールのPACKET MONSTER INC.という企業に譲渡される・・・というスラドのニュースがあった。

2ちゃんねる、海外企業に譲渡される
http://slashdot.jp/it/09/01/02/098242.shtml

ひろゆき氏および2ちゃんねるを巡る訴訟対策らしいと記事では推測している。ほんとおつかれさんだ。