文庫本:世に棲む日日

whzat2008-01-18

文庫本:世に棲む日日
幕末の思想家吉田松陰長州藩士で弟子でもあった高杉晋作を描いた司馬遼太郎の時代小説だ。おもしろい。

「世に棲む日日」(4巻) 司馬遼太郎
http://www.amazon.co.jp/%E4%B8%96%E3%81%AB%E6%A3%B2%E3%82%80%E6%97%A5%E6%97%A5%E3%80%881%E3%80%89-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%8F%B8%E9%A6%AC-%E9%81%BC%E5%A4%AA%E9%83%8E/dp/4167663066


徳川幕府終焉の歴史舞台で、黒船来航以降の日本の攘夷運動の精神的起爆剤になったのが吉田松陰の思想だといわれている。実際に松蔭の刑死後、彼の弟子たちが長州藩の実権を握り倒幕・新政府設立で活躍する。特に弟子の高杉新作は武士でなく町人・農民で組織した志願兵部隊「奇兵隊」を設立し、幕長戦争では予想を裏切って勝利する。

前半は吉田松陰について書いている。これを読むと吉田松陰の思想よりも、その人となりが同世代と門人たちに与えた影響力に驚く。思想家というよりも攘夷宗教家・教祖と言ってもいいだろう。ただし小説中では松蔭の思想をブラックボックスとして扱い内容について論議しない。松蔭はアメリカ密航に失敗して刑死するが、その後学者や各藩の攘夷派の行動に決定的な影響を与える。また謹慎中に開いた松下村塾では、その後の明治維新政府設立の重臣となる人材を育てた。
後半は高杉晋作の冒険小説のような波乱と活躍絵巻だ。惜しくも肺病で若くして没するが、幕長戦争勝利の立役者だ。

残念なのは松蔭の「飛耳長目録」についてあまり書いていないことだ。

http://www.ysn21.jp/furusato/ishin/rekishi-manga/dai-1/hiji-2.html

こちらは別の本で調べる予定だ。